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2011年2月18日 (金)

撫で刷毛(なでばけ)<その2>

こんにちは玉木覚です

表装作業で使う道具の紹介ということで、『撫で刷毛(なでばけ)<その2>』をお送りします。『撫で刷毛(なでばけ)<その1>』から少し間が空いてしまいすみません

さて、『撫で刷毛』は、刷毛の毛がフワフワして柔らかく、濡れている紙を撫でてのばすために使う道具、と紹介しました。下の写真が『撫で刷毛』です

1_2 ←撫で刷毛

6_2 ←毛の部分

5_2 ←毛の部分

今回は具体的に撫で刷毛を使っている様子を紹介します。その前に少し前置きをさせてください

撫で刷毛は毛先がフワフワしていてとても柔らかいので、ソフトなタッチで対象物(紙や布)を撫でてのばすことができます。しかし、通常、表具作業で撫で刷毛を使って紙を撫でる場合、とても注意しなければなりません。なぜなら、撫で刷毛で撫でてのばす紙は水分を吸っていることが多いからです(この理由は最後の<オマケ>で述べます)。水分を吸ったこの状態ではいくら柔らかい刷毛を使っても、直接撫でると毛羽立ったり破れたりしてしまいます。また、紙には墨で文字や絵を書いているもの(書画作品)や、赤や青や緑などの色で着色されているものもあります。こういう紙を直接撫でると、墨を引きずって作品を台無しにしたり、刷毛の毛に色移りして刷毛が傷んでしまいます。(刷毛が傷むくらいで済んだらマシですが、作品を傷つけることは絶対にやってはいけません

これらの問題を解決するために、撫でるもの(紙や作品など)の上に紙を一枚敷いてから撫で刷毛で撫でます。すると、撫でるもの(紙や作品など)に直接刷毛が接しないので、紙や作品が毛羽立ったり破れたりすることも無いですし、墨を引きずる心配もありません刷毛の毛に墨の色や着色された紙の赤や青の色が刷毛に色移りすることもほとんど無いです(*注:敷いているものはあくまでも「紙」なので、撫ですぎると破れたり、色が紙を貫通してくることがあります。紙を敷いたからと言っても撫で過ぎにはご用心です。)

では、実際に撫で刷毛で撫でているところを写真を交えて見ていきましょう

1 ←①作品の紙だと思って下さい。

2 ←②作品を裏返してスプレーで水をかけます(作品の表から水をするとにじむかもしれませんので・・・。)。紙が水分を吸ってヘロヘロにのびてきています。

4 ←③数分間静置して紙が水分を吸ってのびたことを確認して、余分な水分を拭き取ります。

5 ←④直接撫で刷毛で紙を撫でないように、紙を一枚敷きます。

7_2 ←⑤撫で刷毛で撫でてのばします。

8 ←⑥撫で刷毛でのばした後です。(*注:こののばした紙は糊で緑色の板に張り込んでいません。)

少しは撫で刷毛の使い方をお伝えすることができたでしょうか

オマケ
『通常、表具作業で撫で刷毛で撫でてのばす紙は、水分を吸っていることが多い』と紹介しましたが、このことについて触れておきます。撫で刷毛で撫でる紙は、額装の作品、襖・屏風・衝立などの上張り(一番外側に張る紙、要するに見える部分)なども含めてなのですが、『何かに張り込む紙』である場合がほとんどです。紙は『水分を含むとのびて、乾燥すると縮む』という性質を持っています。この性質を利用して、次のようにして綺麗に張り込みます

①『水分を含ませてのびた紙』を糊を使って額などに張り込みます。(このときに撫で刷毛で撫でてのばします。)

②張り込んだ紙を乾燥させると、弛むことなくピンと綺麗に仕上がります(紙は『乾燥すると縮む』性質から)。

『水を含ませるなんて邪魔くさいことをせずに張り込んだらいいんじゃないのか?』という声が聞こえてきそうですが、『水を含ませていない紙(「のびていない紙」ですね)』を使って同様に張り込むと、紙の弛みが残ってしまって仕上りがとても悪くなります。こういう理由で、撫で刷毛でのばす紙は水分を吸っていることが多いのです。

ちなみに、布を張り込む場合も紙と同様に水を含ませるのですが、布の場合は紙を撫でる時ほど気を遣いません。なぜなら、普通の布は撫でることによって紙のように毛羽立ったり破れたりする心配が少ないからです。また、布の色が刷毛の毛に色移りすることも少ないです。

<お詫びと訂正>
2011年2月13日のブログ記事、『撫で刷毛(なでばけ)<その1>』で紹介した刷毛に水刷毛(みずばけ)が混じっておりました。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。なお、当該の記事は修正しておきました。

2_3 ←『撫で刷毛』ではなく『水刷毛』です。

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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