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2011年7月15日 (金)

草の行(掛軸)

こんばんは玉木覚です

今日も掛軸の様式のお話です

『草』仕立の掛軸には、昨日の記事で紹介しましたように『草の行』と『草の草』の二つがあります。今日はそのうちの『草の行』の掛軸を紹介します

早速ですが、『草の行』の掛軸をみてみましょう

7 ←『草の行』仕立の例、その1

2 ←『草の行』仕立の例、その2

3_2 ←『草の行』仕立の例、その3 4 ←『草の行』仕立の例、その4

『草の行』仕立は『行の行』仕立の柱の幅を細くした様式です。ですので、『草の行』の姿は『行の行』とよく似ています。次に『行の行』の掛軸を見てみましょう。

2_2_2 ←『行の行』仕立の掛軸の例

ねっ、『行の行』の柱が細くなると『草の行』になりますよね

『草の行』の模式図を見てみましょう。『行の行』の模式図も載せておきますので、比べてみてくださいね。(『草の行』の『風帯』のタイプは、『垂風帯(一文字風帯)』です。そして、『行の行』の『風帯』も『草の行』と同じタイプの『垂風帯(一文字風帯)』です。)

1 ←『草の行』仕立の模式図 7_2 ←『行の行』仕立の模式図

掛軸の部材である『風帯』、『一文字』、『中廻』、『上下(天地)』のことを、「『草の行』仕立の例、その1」の掛軸をモデルにして、簡単にですが過去の記事で紹介しています。よろしければこちらも参考程度に見てみてくださいね。

<過去のブログ記事>

●『風帯』 ⇒ 2011年6月16日 (木) 風袋(ふうたい)

●『一文字』 ⇒ 2011年6月19日 (日) 一文字

●『中廻(中縁)』 ⇒ 2011年6月21日 (火) 中廻(中縁)

●『天地(上下)』 ⇒ 2011年6月25日 (土) 天地(上下)

『草の行』仕立の掛軸の用途についてです

『草の行』仕立の掛軸の用途は、茶掛用の墨跡(ぼくせき)が中心です。ただし、床幅の制限により、それ以外の本紙でも『草の行』で仕立てることがあります。

*:墨跡(ぼくせき)とは、現在では宗教者(特に仏教関係者)による宗教的内容の書跡を総称する言葉として用いられています。本来は禅宗の高僧などの書跡を指すものと言われています。

『草の行』は茶掛用の墨跡を作品にした掛軸ですので、鑑賞される場所は茶室や床の間が多いです。とはいっても、そんなに堅苦しく考えず、リビングなどで鑑賞しても良いと思います。(マンションなどの現在の建築様式では、床の間を有するお家の方が少ないでしょうから)

ところで、真・行・草という言葉は、「床の間」の様式を指す言葉でもあります。なぜ床の間の様式を指す言葉が掛軸の様式を表す言葉にも使われているかと言いますと、ちょっと話が長くなりますが・・・。

掛軸は「装飾芸術」と言われています。「装飾芸術」とは、「住宅空間や私達の身の回りを飾ることを目的に制作される造形芸術」のことです。具体的には、絨毯、壁掛け、シャンデリア、家具、置き物、などであり工芸的性質を持つものが少なくありません。つまり平たく書くと、掛軸は「装飾芸術」であり、部屋を飾るものです。ということは、掛軸は掛軸を飾る場所(部屋)の様式によって、その部屋にうまく調和するように作らなくてはなりません。簡単にいうとこういう事情がありまして、「床の間」の様式を真・行・草で表すのと同様に、掛軸の様式を真・行・草という言葉で表します。(平たく言うと、『真』の床の間に調和する掛軸が『真』仕立ということです。このあたりのことは別の記事で詳しく紹介します。)

このことを踏まえまして、掛軸の真・行・草に目を向けてみましょう

前回の記事の最後で「この『草』仕立の掛軸は、『真』仕立(仏表具)や『行』仕立(大和表具)とはちょっと違った趣を持っています。」と書きました。これは何のことかというと、『草』のスタイルは『真』のスタイルに対するアンチテーゼ(反対の考え方)であるということです。つまり、今までの記事で『真』仕立は仏教系、『行』仕立は神道系、と紹介しましたが、これは別の表現をすると『真』仕立は「唐(中国)」の様式、『行』仕立は日本の様式、ということができます。このことは掛軸の『真』仕立、『行』仕立のみならず、『真』と『行』というスタイルそものもに当てはまることです。このことは「床の間」にも垣間見られます(『行』のスタイルは明確ではありませんが)。(床の間のお話は別の記事で詳しく紹介します。)

ちょっと話が脱線しましたが、何が言いたいかと言いますと、『草』仕立は『真』仕立・『行』仕立と同じようにどこかの国の様式ではなく、それまであった文化に対するアンチテーゼ(反対の考え方)として生じたスタイルである、ということです。『草』仕立の掛軸が鑑賞される場所は元々は茶室であり、茶室もまた『草』のスタイルに基づいて作られています。(床の間のお話と一緒に別枠で詳しく紹介します。)

ですので、『草』仕立の掛軸は『真』仕立の掛軸と反対の概念で作られており、これが『草』仕立の掛軸の面白いところであると思います。つまり、『真』仕立の掛軸(仏表具)は荘厳・重厚なイメージであるのに対して、『草』仕立の掛軸(茶掛)は質素・侘びというイメージが表現されているという点です。このことは、『草』仕立の中でも次回に紹介します『草の草』仕立でより顕著になります。

最後に、『真』仕立の掛軸(仏表具)を載せておきますので、本日紹介した『草』仕立の掛軸と見比べてみてください。

2_3 ←『真の行』(仏表具)の例

ではでは、次回をお楽しみに~

<おまけ>

玉木楽山堂のウェブサイトでは掛軸を多数取り扱っております。掛軸の商品紹介のページに『草の行』を含めていろいろな様式の掛軸を取り揃えていますので、こちらも参考程度にご覧ください。上で紹介した掛軸も載っていますよ。また、「『草の行』仕立の例、その1」の掛軸を作った過程も簡単に紹介しています。併せてご覧くださいませ。

<玉木楽山堂のウェブサイトの掛軸のページのご案内>

・掛軸のページその1を見る。

・掛軸のページその2を見る。

・「『草の行』仕立の例、その1」の掛軸を作った過程

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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