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2011年8月31日 (水)

別の観点から見た掛軸 その6 <床の間の様式と掛軸の関係②>

こんばんは玉木覚です

ちょっと間が空いてしまいましたが、今日は「別の観点から見た掛軸 その6」ということで、床の間の様式と掛軸の関係を探って行きたいと思います

まずは各様式の床の間の特徴をおさらいしましょう

<それぞれの床の間の特徴>

『真』…『真』とは最も格式の高い様式です。全体に厳格で格式的な書院式の座敷です。イメージとしては荘厳、格式、厳粛、権威、豪華、といった感じです。

『行』…『行』とは書院風の『真』の座敷と草庵風の『草』の座敷との中間的な表現様式。表現や形式の幅は広い。イメージとしては端正、優雅、憩い、といった感じです。

『草』…『草』とは格式や形式を排除した自由で簡素な造形によるもの。柔らかで優しい線や面での表現。これを突き詰めたものは、侘び茶の小座敷(草庵風座敷)であり、「草の草」と呼ばれます。イメージとしては侘び、さび、雅趣、風情、遊び心といった感じです。

『数奇屋風書院』…『数奇屋風書院』は、様式もイメージも『草』と近い感じです(似ている感じ)。しかし、こちらは文人様ということで『草』とは異なったものとされているようです。

続いて、各様式の掛軸の特徴をおさらいしましょう。青地は詳細の記事にリンクしていますので、よかったらご覧ください。(この一連のブログ記事では床の間の様式と掛軸の関係を探っていきますので、掛軸も床の間の様式を同じ『真・行・草』((広義の)大和仕立)と『文人仕立』に焦点を絞ってみます。)

<掛軸のおおまかな分類>

①(広義の)大和仕立 ⇒ 『真』仕立(仏表具)『行』仕立(大和表具)『草』仕立(茶掛) (更に『真の真』・『真の行』・『真の草』『行の真』・『行の行』・『行の草』、『草の行』・『草の草』の合計8体に分けられる)

②文人仕立 ⇒ 『丸表具(袋表具、袋仕立)』『二段文人仕立』『唐表具』

【*:『文人仕立』の補助様式として、『明朝仕立』があります。また、『明朝仕立』のバリエーションとして『太明朝仕立』『筋割明朝仕立』『上下明朝仕立』があります。】

まずは、『真・行・草』の床の間と『(広義の)大和仕立』の関係を見てみましょう。(『数寄屋風書院』と『文人仕立』の関係については、『真・行・草』の床の間と『(広義の)大和仕立』の関係のお話のあとで見てみます。)

ところで、床の間の様式にしても掛軸の様式にしても『真・行・草』の記事をご覧になってくださっている読者様はお気付きかもしれませんが、一般的には『真→行→草』の順番に格が低くなります。つまり、『真』が一番格上で、『行』が二番目に格上で、『草』が一番格下になります。『真・行・草』という様式ができた順番は、『真』が最初にできて、次に『草』ができて、その次(もしくは「草」と同時期)に『行』が出来たと考えられています。しかし、各様式の格付けと各様式ができた順番には大した相関性は無く、各様式の格付けには歴史的・文化的な背景が大きくかかわっています(その1からその5の記事をご覧ください。)。

これまでのことを踏まえますと、床の間と掛軸ともに『真・行・草』を次のように解釈することができます。

●真 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格上の様式。イメージは、荘厳、格式、厳粛、権威、豪華、など。また、武家様、唐様、仏教系の要素を持つ。

●行 ⇒ 『真・行・草』の中で二番目に格上の様式。イメージは、端正、優雅、憩い、など。また、公家様、和様、神道系の要素を持つ。

●草 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格下の様式。このことから「格落ち」の意味を含む。イメージは、侘び、さび、雅趣、風情、遊び心、など。また、武家様に対する反対の概念(アンチテーゼ)や禅的な考え方を持つ。

禅的な考え方 ⇒ 『草』は武家様の反対の概念を持っているとはいえ、千利休が当時の武家社会に立脚していたことを考慮すると、やはり千利休が生んだ『草』は武家様の対極にありながらも武家様の一面を写すものと考えられます。

さて、『真・行・草』の解釈を組み合わせると、『真の真』や『真の行』や『真の草』などの掛軸の細かな様式を何となく想像できる気がしませんか?例えば『真の真』だったら仏教系(仏表具)の最上級の様式、『真の行』だったら仏教系(仏表具)で二番目に格上の様式、といった具合です(文末のおまけをご覧ください。)。

次からは、床の間の『真』と掛軸の『真』について見ていきましょう

お楽しみに~

<おまけ>

掛軸の形式を表す表現である『○の△』の○の部分が掛軸のカテゴリ(仏表具、大和表具)を示し、△の部分がそのカテゴリの中での掛軸の格を示しています。

つまり、『真の真』でしたら「仏表具(○の部分)の最も格上の様式(△の部分)」を表しており、『行の行』でしたら「大和表具(○の部分)の二番目に格上の様式(△の部分)」、といった具合です。「真」・「行」・「草」と言う言葉は、『①掛軸のカテゴリ(仏表具、大和表具、茶掛)を表す意味』と、『②そのカテゴリ内での掛軸の格を表す意味』の二つの意味を持っていることがわかります。

なお、このことは、床の間の様式においても同様のことが言えるようです。

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表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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