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2011年9月 8日 (木)

別の観点から見た掛軸 その12 <床の間の様式と掛軸の関係⑧>

こんばんは玉木覚です

今回は昨日の記事の続きということで、『文人様』の掛軸、つまり『文人仕立』の掛軸を見てみます。そして、『数寄屋風書院』の床の間と『文人仕立』の掛軸について関係をみてみます

『文人仕立』については以前にこのブログでも触れたことがありますので、そちらを参考にしてみます(斜体部分が抜粋)。

『文人仕立』はその名の通り、特に文人画に多く用いられることからその名を付けられました。『文人表具』と呼ばれることもあります。また、文人画だけではなく中国趣味的な作品の掛軸にも用いられることから、唐(から)仕立とも呼ばれます。なお、『文人仕立』には『風帯』を付けません。

Image15 ←『文人仕立(丸表具)』の掛軸の例 (『風帯』が付いていません)

絵画では文人画(南画)や中国趣味風の画、書では篆書(てんしょ)・隷書などの中国風書体、中国詩文、また拓本などに用いられます。また、江戸時代には蘭画**の軸装にも『文人仕立』が用いられていたといわれていますが、これは当時、洋風画に使用する様式が定まっていなかったことが考えられます。現在でも洋風の作品や前衛的な書作品は大和仕立では映りにくい事から、『文人仕立』を使うことが多いです。

:文人画の文人とは、知識人のことです。ですので、文人画とは知識人が書いた絵画ということです。もう少し言葉を足しますと、文人画は文人(知識人)が余技的に描いた絵画のことでして、職業画家との区別をするために明末の「董其昌(とうきしょう)」が使用し始めた言葉といわれています。明末ということから、文人画は中国の文化であることが分かります。(「文人(知識人)」とは当時の中国人のことですね)

一方、日本の文人画を南画(なんが)といいます。これは中国の南宗画に由来します。詳しいことは、池大雅、与謝蕪村、富岡鉄斎などのキーワードで検索してみてください。いろいろ出てきますよ。

文人画も南画も画題は水墨画などの東洋画の一般的なものと共通する、山水・花鳥・草虫・花卉(読みは「かき」。草花のこと。特に「歳寒三友(「さいかんのさんゆう」松・竹・梅)」、「四君子(「しくんし」菊・竹・梅・蘭)」が好まれる。)などです。

**:蘭画とは、江戸時代に生じた秋田蘭画や長崎派などの諸派による洋風画のことです。蘭とは当時交易のあったオランダのことです。

『文人仕立』の様式ですが、代表的なものとしては『丸表具(袋仕立)』が挙げられます。他には『二段文人仕立』『唐表具(とうひょうぐ)』があります。そして、『文人仕立』の補助様式(バリエーション)として『明朝(みんちょう)』があります。

上記の中の青字部分は該当するブログ記事にリンクしていますので、よかったらご覧ください。

『文人仕立』は、その様式(「丸表具」、「二段文人仕立」、「唐表具」)と、補助様式の数を合計すると、他の様式と比較してその数が多いことに気付きます。また、「丸表具」を例に取りますと、一文字が付いたり付かなかったり、筋廻しがあったりなかったりと細かいバリエーションがあります。『文人仕立』にこれだけたくさんのバリエーションが存在することの背景には、『文人様』が意識の上では従来の格付けに縛られない独立したもの(別の表現をすると「制約が少ない」ということ)であったということが垣間見えるのではないでしょうか。

今更と思うかもしれませんが、今一度確認しておきますと、『数寄屋風書院』は『文人仕立』に対応します。つまり、『文人仕立』の掛軸は、『数寄屋風書院』の床の間に掛けられていました。

また、『真・行・草』の仕立と異なり、『文人仕立』は上述のように前衛的な書作品にも用いられるなど、幅広い使われ方をしています。よって、大雑把なイメージですが、『真』を和のクラシック、『行(特に行の行)』をエレガント、『行の草』を江戸町人の「いき(粋)」、と例えるとしたら、『文人様(文人仕立)』はカジュアルといった感じでしょうか(『草の行』もある意味でカジュアルな気がします)。

5 ←『丸表具』の『筋あり+一文字あり』の例

3 ←『丸表具』の『筋なし+一文字あり』の例

11_5 ←『丸表具』の『筋なし+一文字廻あり』の例 

3_2 ←『太(ふと)明朝仕立』(『聯(れん)仕立』)の掛軸の例

今回の記事で、床の間の様式と掛軸の様式の関係を見ていくことは終わりにしたいと思います。『真・行・草』の床の間と『真・行・草』の掛軸の関係および、『数寄屋風書院』の床の間と『文人仕立』の掛軸の関係を歴史的・文化的な観点から覗くことができたのではないかと思います。

稚拙な文章かつ相当マニアックな内容になりましたが、最後までお付き合いくださいました読者様に深く感謝いたします。

次回の表具に関する記事は、このブログ内で「またの機会に書きます」といったままになっている事柄についてお話しします

お楽しみに~

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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