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2011年9月 1日 (木)

別の観点から見た掛軸 その7 <床の間の様式と掛軸の関係③>

こんばんは玉木覚です

今日は床の間の『真』と掛軸の『真』について関係を見てみます

まずは『真・行・草』の各言葉の意味やイメージについてみておきましょう。(このことは床の間の場合でも掛軸の場合でも、同様に解釈して用いることができます。)

●真 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格上の様式。イメージは、荘厳、格式、厳粛、権威、豪華、など。また、武家様、唐様、仏教系の要素を持つ。

●行 ⇒ 『真・行・草』の中で二番目に格上の様式。イメージは、端正、優雅、憩い、など。また、公家様、和様、神道系の要素を持つ。

●草 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格下の様式。このことから「格落ち」の意味を含む。イメージは、侘び、さび、雅趣、風情、遊び心、など。また、武家様に対する反対の概念(アンチテーゼ)や禅的な考え方を持つ。

禅的な考え方 ⇒ 『草』は武家様の反対の概念を持っているとはいえ、千利休が当時の武家社会に立脚していたことを考慮すると、やはり千利休が生んだ『草』は武家様の対極にありながらも武家様の一面を写すものと考えられます。

今日は『真』についてみていきます。『真』はさらに『真の真』、『真の行』、『真の草』の三種類に分けられます。このあたりも含めてみていきましょう。

<床の間の様式の『真』について>

床の間の『真』の思想は、現在では多く仏教系の寺院に受け継がれています。武家様の建物内部では奥座敷の私的空間に水墨画が用いられていました。仏教系寺院の本堂では金碧障壁画が施されることから『真の真』がこれに相当し、やはり奥向きには水墨画が襖絵に多用されることからこれを『真の行』とすることができます。そして、今日あえて言うなら真もどきを「真の草」と位置づけることができます。

<掛軸の様式の『真』について>

掛軸の『真』の仕立は、「仏表具」として親しまれており、仏画(仏像、高僧像、祖師像、曼荼羅など)、お名号、お題目など仏教にかかわる書画の軸装に用いる様式です。『真』の仕立(「仏表具」)には、『真の真』、『真の行』、『真の草』の三体(真の三体)が存在します。一般的には、、『真の真』が最も格上、その次に『真の行』が来て一番下は『真の草』といわれています(ただし、宗派によってはこの限りではありません。)。また、見た目も『真の真』が最も重厚、荘厳、豪華であり、『真の行』→『真の草』になるにつれて簡素になっていきます。(『真の真』は「一文字廻」、『真の行』は「上下一文字」、『真の草』は「一文字無し」)

床の間の『真』の三体と掛軸の『真』の三体を比べてみると、なんだか相関性があるように思いませんか?格付けの順位は床の間と掛軸で同様ですし、「仏教系」ということも共通しています。また、床の間も掛軸も、格が下がるにしたがって重厚さ、荘厳さ、豪華さといった『真』に顕著な要素が目立たなくなって簡素化されていきます。

一般的には、掛軸の『真の真』仕立はお寺の本堂に掛けられるような高位なものに、『真の行』仕立は本尊を『真の真』仕立にしたときの脇侍として、『真の行』仕立は本尊として成り立ちにくいような仏画主題の絵画作品(羅漢像など)に、それぞれ用いられることが多いです。このことも床の間の『真の真』(本堂)、『真の行』(奥向き)、『真の草』(真もどき、←これはちょっと違うかも)と似たような傾向にありますよね。つまり、掛軸は掛軸をかける場所(床の間)の様式に調和するように設計されていることが推察できます。例えば武家の権力の象徴である『真の真』の床の間には、『真』の三体の中で最も重厚、荘厳、豪華な『真の真』仕立の掛軸が掛けられる、といった具合です。武家は仏教を信仰していたことから、「仏表具」である『真』仕立ができたことは自然なことではないでしょうか。

このことから、もし美術館などで『真の真』仕立の掛軸を見つけた時には、

●『真』の三体の中で最も格上。

●『真』の三体の中で最も重厚・荘厳・豪華。

●武家と関係あり。

●仏教系(唐様)の作品である。

●掛軸が本尊の場合、脇侍の掛軸(『真の行』仕立)が存在する可能性がある。

といったことなどが想像できます。

『真の行』仕立の掛軸を見つけた時なら、

●『真』の三体の中で二番目に格上。

●『真』の三体の中で二番目に重厚・荘厳・豪華。

●武家と関係あり。

●仏教系(唐様)の作品である。

●もしかしたら本尊(『真の真』仕立)の掛軸が存在する可能性大(掛軸が脇侍の場合)。

といったことなどが想像できます。

『真の草』仕立の掛軸を見つけた時なら、

●『真』の三体の中で一番格下。

●『真』の三体の中で最も重厚さ・荘厳さ・豪華さに欠ける。

●武家と関係していたものかもしれない。

●仏教系(唐様)の作品である。

●本尊として成り立ちにくいような仏画主題の絵画作品(羅漢像など)か。

といったことなどが想像できます。

こう考えると掛軸の鑑賞が面白くなってきませんか?

次回は床の間の『行』と掛軸の『行』について見てみます。『行』というのはちょっとあいまいな部分があるのですが、このことがより面白みをプラスしてくれていると思います

お楽しみに~

1_2  2_3_2 ←『真の真』仕立

2_2  3 ←『真の行』仕立

3_2  1_4 ←『真の草』仕立

2_4 ←『真の草』仕立(拡大)

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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