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2011年9月 4日 (日)

別の観点から見た掛軸 その10 <床の間の様式と掛軸の関係⑥>

こんばんは玉木覚です

今日は『草』の床の間と掛軸のお話に移りましょう。

まずはいつものように『真・行・草』の各言葉の意味やイメージについてみておきますね。(このことは床の間の場合でも掛軸の場合でも、同様に解釈して用いることができます。)

●真 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格上の様式。イメージは、荘厳、格式、厳粛、権威、豪華、など。また、武家様、唐様、仏教系の要素を持つ。

●行 ⇒ 『真・行・草』の中で二番目に格上の様式。イメージは、端正、優雅、憩い、など。また、公家様、和様、神道系の要素を持つ。

●草 ⇒ 『真・行・草』の中で最も格下の様式。このことから「格落ち」の意味を含む。イメージは、侘び、さび、雅趣、風情、遊び心、など。また、武家様に対する反対の概念(アンチテーゼ)や禅的な考え方を持つ。

禅的な考え方 ⇒ 『草』は武家様の反対の概念を持っているとはいえ、千利休が当時の武家社会に立脚していたことを考慮すると、やはり千利休が生んだ『草』は武家様の対極にありながらも武家様の一面を写すものと考えられます。

『草』の歴史的背景に関しては、以前にこのブログ記事でも触れたことがあるのですが、改めてみてみます。

<床の間の様式の『草』について>

草庵風茶室(『草の草』の床の間)は、極真の様式、すなわち武家様に対するアンチテーゼとして、あるいはカウンターカルチャー的に生まれたといわれています。そして、一説によると、待合(まちあい)を茶方の『行』(つまり『草の行』)と考えることが自然とされています。このような『草』の様式は侘び茶を大成した千利休によって確立されました。

ところで、千利休の打ち出した『草』の概念は室町時代やそれ以前の『草』の考え方と異なります。すなわち、これは『草』が武家様の対立概念とはいえ、利休が当時の武家社会に立脚していたところを踏まえると、やはり利休の『草』は武家様の対極にありながらも武家様の一側面を写すものです。

<掛軸の様式の『草』について>

『草』仕立の掛軸は「茶掛」として親しまれており、『真』仕立の掛軸と反対の概念で作られています。つまり、『真』仕立の掛軸(仏表具)は荘厳・重厚なイメージであるのに対して、『草』仕立の掛軸(茶掛)は質素・侘びというイメージが表現されているという点です。このことは、『草』仕立の中でも『草の草』仕立でより顕著になります。

これは千利休が『草の草』体こそ茶道の極みとして考えたことから、『草の草』に対して『草の行』を格の低いものとして捉えていた節があります。しかし、いつの頃からか価値が逆転して、現在では、作者が格上の作品を『草の行』仕立にすることが多くなりました。これは現在では『草の行』仕立の方が『草の草』仕立よりも格上の様式であることを意味しています。

さて、『草』仕立には、『草の行』と『草の草』という二つの様式があります。この二つの様式の見た目の違いは、『風帯』が『垂風帯(さげふうたい)』であるか、『押風帯(おしふうたい)』であるかです。また、『草の行』仕立は『一文字』、『中廻』、『上下』に布(裂(きれ))を使った掛軸(裂表具)ですが、『草の草』仕立は『一文字』と『中廻』は布を使いますが『上下』には紙を使った掛軸(紙表具)が多いです。これは千利休が紙表具を好んだことによるといわれています。

では、床の間の『草』と掛軸の『草』を照らし合わせてみましょう。

現在では、掛軸の『草の行』と『草の草』は千利休が侘び茶を大成した頃とは格が逆転していますが、侘び茶が確立された頃の『草』と床の間の『草』は考え方が一致しています。つまり、当時の考え方でいくと、『草の草』仕立の掛軸は草庵風茶室(『草の草』の床の間)に掛けられ、『草の行』仕立の掛軸は待合(『草の行』の床の間)に掛けられることが自然な形になります。また、余談ですが、待合(『草の行』の床の間)には『行』仕立の掛軸が掛けられることもあるようです。

1  7 ←『草の行』仕立

2_4 3_2 ←『草の草』仕立

次回は『数寄屋風書院』の床の間と掛軸の『文人仕立』についてみていきますね

お楽しみに~

<おまけ>

『草』には『草の行』と『草の草』の二つの様式しか存在しません。つまり、『草の真』はありません。これのはっきりとした理由については分かりませんが、一説によると、次のように考えられています。

茶方では『草』(茶室)を本来の姿と考えることから、『草』以外のスタイル(『真』と『行』)とは考え方の方向性が逆になります。つまり、本席(草庵風茶室)を極みと捉えるため、これに劣るもの(待合)を『行』とする考え方です。これが『草の真』が存在しない理由かもしれません。

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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