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2011年9月16日 (金)

デザイン表具について<その3>

こんばんは玉木覚です

今日はデザイン表具のデザインに関するお話の続きです

前回の記事では、デザイン表具の意匠(デザイン)を決めるときには、掛軸に仕立てる作品に対して、

1.掛軸を作ることの意味。

2.今までの記事で紹介してきたような掛軸の歴史的・文化的な側面を考慮に入れること。

3.掛軸を掛ける場所を考慮に入れること。

などを考える必要があると書きました。(これらのことはデザイン表具に限らず掛軸を作る上で見落とすことができない要素だと思いますが、特にデザイン表具を作るときには意識をしたほうが良いことだと思っています。)

前回でお話した、「1.掛軸を作ることの意味。」を念頭において、2.と3.の要素を絡めてデザイン表具のデザインの決め方について考えていきます。

本題に行く前に、いつものように大まかな掛軸の分類を見ておきましょう

掛軸は次の3つ(4つ)に大きく分けられます。(青地は詳細の記事にリンクしていますので、よかったらご覧ください。)

<掛軸のおおまかな分類>

①(広義の)大和仕立 ⇒ 『真』仕立(仏表具)『行』仕立(大和表具)『草』仕立(茶掛) (更に『真の真』・『真の行』・『真の草』『行の真』・『行の行』・『行の草』、『草の行』・『草の草』の合計8体に分けられる)

②文人仕立 ⇒ 『丸表具(袋表具、袋仕立)』『二段文人仕立』『唐表具』

【*:『文人仕立』の補助様式として、『明朝仕立』があります。また、『明朝仕立』のバリエーションとして『太明朝仕立』『筋割明朝仕立』『上下明朝仕立』があります。】

③デザイン表具(創作表具、造形表具)

(④その他の様式(絵伝表具))

<補足>

【☆:『(広義の)大和仕立』『文人仕立』の補助様式として、『台表具』および『刳抜表具』があります。

【☆☆:現在ではあまり用いられることのなくなった様式として、『見切仕立』と『韃靼表具』があります。】

「1.掛軸を作ることの意味。」は前回の記事で触れたように『作品の保存性の向上と作品の鑑賞に資すること』です。そして、掛軸が『装飾芸術*1』のひとつであることを考えると、掛軸を作るうえでの大前提として「掛軸の意匠(デザイン)は作品を引き立たせるように設計するべきであって、逆の表現をすると作品を台無しにするような意匠(デザイン)は避けるべきだ。」と言えると思います。

*1:「装飾芸術」とは、「住宅空間や私達の身の回りを飾ることを目的に制作される造形芸術」のことです。具体的には、絨毯、壁掛け、シャンデリア、家具、置き物、などであり工芸的性質を持つものが少なくありません。つまり平たく書くと、掛軸は「装飾芸術」であり、部屋を飾るものです。

ここからは、掛軸の様式が鑑賞者に与える効果について考えてみます。このことがデザイン表具のデザインを決める際に、既存の様式を踏襲することの意味について考えるヒントを与えてくれます。今までのブログ記事でたくさん登場した掛軸の様式のお話を思い出しながら読んでみてくださいね

例えば、今、ある作品が『行の真』仕立で掛軸に仕立てられており、鑑賞者がその掛軸を見ているとします。このときに鑑賞者が『行の真』仕立のことを知っていれば、「この作品のモチーフは神道的な意図を持っているんだろうな」と理解を深めることができます。つまり、様式に従うということは、その様式自体が作品を鑑賞する手助けになるということです。

もうひとつ例を見てみましょう。例えば、ある種子(しゅじ)*2の作品が『真の真』仕立の掛軸に仕立てられているとします。すると、『真の真』仕立という様式を知っている鑑賞者なら種子の示す意味が分からなくても、「この作品は非常に格の高いものなのだな」ということが推測できます。

*2:如来や菩薩を象徴する固有の梵字(サンスクリット文字)のこと。

すなわち、作品のモチーフが何か分からなくても、様式というものはそれと分かるように鑑賞者を誘導する働きがあるといえます。つまり、様式のことを知っていると作品のモチーフや格式が分からなくても、様式から作品のモチーフや格式を推し量ることが可能になります。

次回は、掛軸の様式と用法について考えてみます。

お楽しみに~

<おまけ>

大分前の記事で「掛軸の様式とそのバックグラウンドを知っていると、美術館などで掛軸を鑑賞するときの楽しみ方が増えますよ」といったことを書いた記憶があるのですが、それは今回の記事で述べたように、「掛軸の様式の意味を知っていれば、掛軸の様式から作品を推し量ることができる」ということです。また、様式の意味を知っていれば、その掛軸の用法を推し量ることも可能になってきます。このお話は次回の記事で紹介します。

余談ですが、このブログ記事では「この様式の掛軸だから、この格式の作品だ!」といった断定的な判断ができるということを述べているのではありませんので、ご理解とご了承をお願いいたします。あくまでも、「様式から推し量ることができる(想像することができる)」というニュアンスです。今までの記事でも紹介してきましたように、掛軸の様式には格式付けがなされていますが、これは必ずしも絶対的なものではありません。『真』仕立で例を挙げますと、宗派によっては小幅の如来像や菩薩像を『真の草』仕立に仕立てることがあります(如来像や菩薩像を描いた格の高い作品は、一般的には『真の真』仕立や『真の行』仕立にされることが多いです。)。

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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