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2011年10月24日 (月)

表展作品のメイキング② <掛軸の様式の決定>

こんばんは玉木覚です

今日はメイキング記事の第二回目ということで、「掛軸の様式の決定」をお送りします。

本題に行く前に、まずはどんな作品だったか見ておきましょう。

1  ←今回の作品

今回の作品は南画(文人画というよりは南画だと思われます)*1です。

*1:文人画(ぶんじんが)と南画(なんが)について。

日本の文人画を南画(なんが)といいます。これは中国の南宗画に由来します。ちなみに、文人画とは知識人が書いた絵画ということです。文人画の文人とは、知識人のことです。もう少し言葉を足しますと、文人画は文人(知識人)が余技的に描いた絵画のことでして、職業画家との区別をするために明末の「董其昌(とうきしょう)」が使用し始めた言葉といわれています。明末ということから、文人画は中国の文化であることが分かります。(「文人(知識人)」とは当時の中国人のことです)

そして、掛軸の様式についてざっと見ておきます。(次の分類に見覚えのある方もいらっしゃるかと思います。)

掛軸は次の3つ(4つ)に大きく分けられます。(青地は詳細の記事にリンクしていますので、よかったらご覧ください。)

<掛軸のおおまかな分類>

①(広義の)大和仕立 ⇒ 『真』仕立(仏表具)『行』仕立(大和表具)『草』仕立(茶掛) (更に『真の真』・『真の行』・『真の草』『行の真』・『行の行』・『行の草』、『草の行』・『草の草』の合計8体に分けられる)

②文人仕立 ⇒ 『丸表具(袋表具、袋仕立)』『二段文人仕立』『唐表具』

【*:『文人仕立』の補助様式として、『明朝仕立』があります。また、『明朝仕立』のバリエーションとして『太明朝仕立』『筋割明朝仕立』『上下明朝仕立』があります。】

③デザイン表具(創作表具、造形表具)

(④その他の様式(絵伝表具))

<補足>

【☆:『(広義の)大和仕立』『文人仕立』の補助様式として、『台表具』および『刳抜表具』があります。

【☆☆:現在ではあまり用いられることのなくなった様式として、『見切仕立』と『韃靼表具』があります。】

お待たせしました。ここで本題に入ります。

結論からいいますと、今回の掛軸の様式は「『文人仕立』の『筋割明朝仕立』をベースにした『デザイン表具』」にしました。こちらが『筋割明朝仕立』の模式図です。この模式図の意匠をベースにして、今回の掛軸の意匠を設計しました。『筋割明朝仕立』の細かなお話は、上のリンクをご覧ください。

1_3  2_2

今回の作品は南画ですので、南画に好適な様式である『文人仕立』を選びました。ちなみに、『文人仕立』は文人画(南画)以外には中国趣味風の画、書では篆書(てんしょ)・隷書などの中国風書体、中国詩文、また拓本などに用いられます。

ところで、『文人仕立』と一口に言っても、『文人仕立』にはいくつかのバリエーションおよび補助様式があります。その中から『筋割明朝仕立』を選択した理由はいくつかあるのですが、主なものは次のようなことです。

まずは、この作品を掛軸に仕立てたときに『丸表具』の様式に仕立てるのが一番シックリとイメージできたことです。次に、作品の雰囲気からシックな掛軸にしようと思ったので、表具布には明度・彩度ともに低い落ち着いたものを使おうと思いました。しかし、完成した掛軸は濃色系の壁の床に掛けて鑑賞することをイメージしましたので、デザイン性の他に掛軸と壁面との見切り線の役目を担っている明朝をつけました(掛軸を掛ける場所は、具体的には文人趣味の人たちが煎茶に用いた数寄屋風書院を勝手にイメージしました。)。そして、デザインの点から明朝を普通の明朝ではなく筋割にしました。なお、模式図では一文字が付いていますが今回は一文字か付いていると作品の鑑賞に障るように感じましたので、一文字は付けませんでした。

今回は『競技大会』ですのでこれだけでは面白みに欠けるなぁ、と思って上述の様式をベースにして多少のデザインを加えることにしました。このデザインは次の写真の通り、二つの表具布を使って、その表具布の継ぎ目に筋(金襴)を入れるというものです。

1_4  ←今回の掛軸

では、次回は表具布の選定にいきます。

お楽しみに~

<おまけ>

『文人仕立』の『丸表具』をベースにした『デザイン表具』の例を二つ紹介しますね。

2_2  ←デザイン表具の例1  4  ←デザイン表具の例2

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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