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2016年3月10日 (木)

表展作品のメイキング記事(青年競技大会の部 ver.) <その12.総裏の準備>

こんばんは玉木覚です

今日は掛軸のメイキング記事です。この記事では、2014年の表展の青年競技大会に出品した掛軸(写真1)を作っている様子をお届けしています。

2  ←写真1 2014年の表展の青年競技大会に出品した掛軸

前回の記事では、耳折りの様子を紹介しました(写真2)。

10_2  ←写真2 耳折りが出来たところ

☆前回の記事は、こちらです。 ⇒『2016年2月19日 (金) 表展作品のメイキング記事(青年競技大会の部 ver.) <その11.耳折り>』

今日の記事では、総裏の準備の様子を紹介します。
(今回の記事では、総裏の準備の中でも特に、総裏に使う裏打ち紙の準備について紹介します。)
:掛軸が完成するまでに合計で3回の裏打ちを施します。一回目の裏打ちを『肌裏』、二回目の裏打ちを『増裏』、三回目の裏打ちを『総裏』と呼びます。こちらに簡単に紹介しています。よろしければご覧ください。⇒「掛軸の作成工程」

☆総裏の準備については、こちらの記事もご参考にしてください。
『2015年4月13日 (月) 表展作品のメイキング記事(一般の部 ver.) <その16.総裏の準備その1>』
『2015年4月21日 (火) 表展作品のメイキング記事(一般の部 ver.) <その17.総裏の準備その2>』

<追記>
総裏に関する記事に関しては、下のリンクの記事も併せてご覧ください。
『2011年12月 3日 (土) 表展作品のメイキング26 <総裏の準備、その1>』
『2011年12月 5日 (月)  表展作品のメイキング27 <総裏の準備、その2>』
『2011年12月 6日 (火) 表展作品のメイキング28 <総裏の準備、その3>』
『2011年12月 9日 (金) 表展作品のメイキング29 <総裏>』
『2014年6月 9日 (月) 表展作品のメイキング記事(一般の部 ver.) <その12.総裏>』

では、早速今日の本題に入ります。

今日の記事では、総裏に使う裏打ち紙の準備にスポットを当てて紹介します。
(裏打ち紙の準備以外については、上記のリンク先の記事をご参照ください。今回の総裏に使った材料と方法は、上記リンク先の記事の内容とほぼ同じです。)

まずは、総裏に使う裏打ち紙を準備します。総裏には、宇陀紙と呼ばれる裏打ち紙を使いました(写真3)。
☆宇陀紙については、こちらの記事をご覧ください。⇒『2012年2月19日 (日) 裏打ちの紙⑦』

1  ←写真3 今回の総裏に使った裏打ち紙(宇陀紙)

宇陀紙はそれほど大きな紙ではないので、掛軸に総裏を入れるときは複数枚の宇陀紙を継いで総裏に使う場合がほとんどです。しかし、宇陀紙に何の処理もせずに総裏に使うと、宇陀紙同士の継ぎ目が目立ってしまい、掛軸の仕上がりが悪くなってしまいます。そこで、宇陀紙の端を手でちぎって和紙の繊維を引き出して、『喰い裂き(くいさき)』というものを作ります。(このブログを読んでくださっている方は、「喰い裂き」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。)

喰い裂きを作っておいて、総裏を入れるときに喰い裂き同士で宇陀紙を継ぐことで、宇陀紙同士の継ぎ目を目立たなくさせます。

これが、「喰い裂き」です(写真4)。

10  ←写真4 ちぎり口の拡大(紙の繊維が引き出されています。これが「喰い裂き」です。)

では、ここからは喰い裂きを作っていきましょう。
喰い裂きを作るための道具を準備します。

まずは、宇陀紙です。宇陀紙は写真3で紹介したものを使いました。

次に、骨ベラです(写真5、写真6)。写真6のように、ある程度の厚みがある骨ベラを使います。

1  ←写真5 骨ベラ

2  ←写真6 骨ベラ

そして、刷毛です(写真7)。刷毛はなるべく刷毛先の細い(厚みが薄い)ものを使います。

3  ←写真7 喰い裂きを作るための刷毛

ここからは喰い裂きを作っていく作業に入ります。

まずは、刷毛に適量の水分を含ませます。
刷毛に水分が含み過ぎていると、きれいな喰い裂きを作ることが出来ないので、刷毛が含んでいる余分な水分は写真8のようにして取り去ります。

4  ←写真8 刷毛の余分な水分をタオルで吸い取っているところ

次に、宇陀紙の喰い裂きを作る部分に定規を置いて、その定規に沿わせて適量の水分を含ませた刷毛を滑らせます(写真9)。
☆写真9では、宇陀紙を5枚程度重ねて作業を行っています。

5  ←写真9 定規に沿わせて適量の水分を含ませた刷毛を滑らせているところ

写真9のように刷毛を滑らせて宇陀紙に適量の水分を与えたら、写真10のように定規に沿わせて骨ベラで擦ります。水分を与えた部分を骨ベラで擦ることによって、重ねてある下の宇陀紙まで水分が浸透して、きれいな喰い裂きを作ることが出来ます。

6  ←写真10 定規に沿わせて骨ベラで擦っているところ

そして、骨ベラで擦った部分を手でちぎっていきます(写真11)。

7  ←写真11 骨ベラで擦った部分を手でちぎっているところ

写真12は、骨ベラで擦った部分を、手でちぎり終わったところです。

8  ←写真12 ちぎり終わったところ

このちぎった部分が、喰い裂きです。写真13は、ちぎった部分(喰い裂き部分)を拡大したところです。

9  ←写真13 ちぎった部分(喰い裂き部分)を拡大したところ

これで、宇陀紙の片側に喰い裂きが出来ました。この調子で、もう片側にも喰い裂きを作ります。そして、写真14はもう片側にも喰い裂きを作り終わったところです。

10  ←写真14 もう片側にも喰い裂きを作り終わったところ

これで、宇陀紙の下ごしらえができました。

総裏には宇陀紙の他に、上巻き(絹)、袋、軸助け、が必要ですので、これらも準備します(写真15)。
(これらを準備する様子は、本記事の冒頭にリンク付けした記事に譲ります。)。

11  ←写真15 上から順に、宇陀紙、上巻き(絹)、袋、軸助け

次回の記事では、総裏の様子を紹介します。

お楽しみに

<おまけ>
総裏では、宇陀紙同士を継ぐ部分に喰い裂きをもってきます。喰い裂きの部分は、紙の繊維が出ている状態になっています(写真16)。よって、喰い裂き同士で宇陀紙を継ぐことによって、宇陀紙の継ぎ目を目立たなくさせることができます。

8  ←写真16 裁ち切り(刃物で切った切り口)と喰い裂き

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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