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2017年2月15日 (水)

表展作品のメイキング記事(一般の部 ver.)<その1.裏打ちのめくり>

こんばんは玉木覚です

今日は、掛軸のメイキング記事をお送りします。

今回の掛軸は、古い掛軸の作品を使って作ります(古い掛軸の仕立て直しです)。
前回の記事では、表具をやりかえる前の古い掛軸を紹介しました(写真1)。

1  ←写真1 古い掛軸

この掛軸から作品を取り出して、新しい掛軸に仕立てます。
どういう掛軸に生まれ変わるのか気になる方もいらっしゃると思いますので、ネタばれになりますが完成した掛軸を見てみましょう(写真2)。

16  ←写真2 仕立て直しをした掛軸(表展に出品した掛軸です。)

この掛軸は、行の行と呼ばれる形式です(行の形式については、こちらの記事をご参照ください。⇒『2011年7月 7日 (木) 『行』の仕立(掛軸)』)。
ネタばれをしたところで、本題に戻りましょう。

今日は、古い掛軸から作品を取り出して、裏打ちをめくっていく様子を紹介します。古い掛軸の様子は、前回のメイキング記事に載せています。⇒『2017年1月31日 (火) 表展作品のメイキング記事(一般の部 ver.)<予告>』

普段の掛軸のメイキング記事では掛軸が完成するまでに、肌裏、増裏、総裏、の三種類の裏打ちを入れていますが、今日の記事ではその三つの裏打ちをめくっていきます。
*裏打ちをめくる作業は、作品と裏打ちがどういう状態にあるのかを見極めて行わないと、作品を傷めることにつながります。今回の記事では、作品と裏打ちの状態を慎重に見ながら、肌裏、増裏、総裏、の三種類の裏打ちをめくりましたが、作品と裏打ちの状態によっては増裏と総裏をめくって肌裏を残す場合もあります。

まずは、古い掛軸から作品を取り出します。
カッターを使って、作品の四方を作品よりも少し外側でカットします(写真2)。
そして、作品を掛軸から取り出します(写真3)。
*古い作品は作品自体(画仙紙や顔料など)が劣化している場合が多いので、作品の取り扱いには特に細心の注意を払います。例えば、古い作品の中には、新品の画仙紙では全く問題にならないようなちょっとした力がかかっただけで、取り返しのつかない損傷(折れ、破れ、顔料の剥落)につながる恐れがあります。
今回の作品も作品自体の劣化が進んでおり、作業に入る前のチェックの段階で、顔料が剥落している部分がありました。

2  ←写真2 作品の四方を作品よりも少し外側でカットしたところ

3  ←写真3 作品を掛軸から取り出したところ

無事に掛軸から作品を取り出すことができました。
次は、裏打ちをめくっていきます。
作業台の上に敷紙を敷いて、その上に作品を裏向けにして置きます。
この状態で、スプレーを使って適量の水分を作品に与えます(写真4)。
この時の水分は多すぎても少なすぎてもダメです。作品に与える水分量は、作品にダメージを与えずに裏打ち紙だけをめくることができる必要最低限の水分です。
*作品に与える水分量が多いと、作品の顔料が滲んだり剥落する原因になります。逆に水分量が少ないと、裏打ち紙をめくることができません。

4  ←写真4 スプレーを使って作品に水分を与えているところ

では、裏打ち紙をめくっていきましょう。裏打ち紙は、作品の角からそろりそろりとめくっていきます(写真5)。
総裏の紙を全てめくってから増裏の紙をめくろうと思っていたのですが、総裏の紙と増裏の紙が分離せずに一体となってめくれたので、総裏の紙と増裏の紙を一緒にめくりました(写真5)。

5  ←写真5 作品の角から裏打ち紙をめくっているところ

写真6、写真7は、総裏の紙と増裏の紙をめくったところです。
写真6、写真7には、何本もの白い筋がついていますが、この筋は作品の折れている部分に補強として和紙を貼り付けていた跡です。前回の掛軸を作った表具師さんが、その時点ですでに作品が折れていた部分に補強を入れたのだと思います。
*折れている部分に貼ってあった和紙は、裏打ち紙と一緒に剥がしました。ちなみに、新しく裏打ちを入れるときに、私も補強のために和紙を折れている部分に貼り付けました。

6  ←写真6 裏打ち紙(総裏と増裏)をめくったところ

7  ←写真7 裏打ち紙(総裏と増裏)をめくったところ

総裏の紙と増裏の紙をめくることができたので、次は肌裏の紙をめくります。
肌裏の紙も、先ほどと同様に作品の角からめくっていきました(写真8、写真9)。

8  ←写真8 肌裏の紙をめくっているところ

9  ←写真9 肌裏の紙をめくっているところ

写真10、写真11、写真12は、肌裏の紙をめくったところです。
これで、作品に裏打ち紙は残っていません。裏打ちを入れる前の状態になりました。

10  ←写真10 肌裏の紙をめくったところ

11  ←写真11 肌裏の紙をめくったところ

13  ←写真12 肌裏の紙をめくったところ

ところで、美人画の顔の部分に作品を補強するための和紙が貼り付けられていました(写真13)。この和紙は、作品が裂けている部分を繋ぎとめる役割を担っていたので、取り除かずにそのまま残すことにしました。

14  ←写真13 美人画の顔の部分に、作品を補強するための和紙が貼り付けられています。

写真14は、総裏、増裏、肌裏の裏打ち紙をめくった作品を表から見たところです。

15_2  ←写真14 総裏、増裏、肌裏の裏打ち紙をめくった作品を表から見たところ

これで、裏打ちをめくる作業が完了しました。

このあとは、写真14の状態で作品をしっかりと乾燥させます。そして、掛軸に使う布の選定を行います。

次回もお楽しみに~

☆余談ですが、作品にあった黄色や茶色のシミは、裏打ち紙をめくるときの水分で取り除くことができました。

表具師 玉木楽山堂

http://www.tamakirakuzando.com/

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